たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「気に入った?」
「はい。今まで食べたことがなかったけど、美味しいですね」

 琴音はクッキーを今度買うことにした。

「だろ?俺もたまに買うから」
「そうなんですか」
「ところでさ、琴音ちゃん、学校からここに来たの?」
「そうですよ」

 すると、彼は目を閉じて、頭を下げた。

「お疲れ様」
「あ、いえ・・・・・・」

 琴音も同じように頭を下げる。

「使わなくていいから」
「何をですか?」

 何を言っているのかわからなかったので、聞こうとするのと同時に、支樹が口を開いた。

「敬語を使わなくていいよ」

 敬語じゃなくていいってことは、友達と話す感覚でいいってことだよね。正直、まだ少し混乱している。

「いきなりそんなことを言うから、琴音がオロオロしているだろう」

 兄が苦笑いをしながら、私の頭に手を置いた。

「そんなに難しいことは言ってないよ」

 ジュースを飲んで、少し落ち着かせた。飲んだ後、彼のほうへ向いて、私から話しかけてみた。

「支樹さんも今日、遊びに?」
「ストップ」

 あの、何か変なことを言いました?
 彼の顔を覗き込んでいると、彼が口を開いた。

「あのさ、呼び捨てにして」
「いいのですか?」
「さっき、人の話を聞いていた?」
< 20 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop