たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 思わず首を傾げた。すると、彼は溜息を吐いた。

「だから、敬語はいらない」

 あぁ、そのことか。他の後輩たちにもこのようなことを言っているのだろうか。

「わかった。支樹」

 そういうと、支樹は満足そうに笑った。

「俺はさ・・・・・・」
「ん?」
「今日、テスト勉強のために、ここに来た」

 さっきの質問の答えね。テスト勉強。たしか、テストは一ヶ月以上前からって前にお兄ちゃんがいっていたな・・・・・・。小さなテーブルにノートと教科書、筆記用具などがあり、その下には、鞄が置いてある。

「支樹、そろそろ、勉強を再開しないか?」
「これもうまいよ、ほら」

 彼は私にひたすらクッキーを与えていた。あの、あんまり食べ過ぎると、夕飯を食べることが出来なくなる。

「美味しい!」
「気に入った?」
「うん!」
「支樹、お前は何をしているのだよ」

 兄をそれほど気にとめないで、すました表情をしていた。

「琴音と遊ぶために来た」

 それが何か?とでも言いたそうに顔を近づけた。
 勉強をしなくていいのだろうか。思わず、言いそうになった。
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