たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「嘘を吐くな、さっきまできちんとやっていただろう。おい、どうにかしろよ」
「遊びに来ただけなのに・・・・・・」

 なんで怒られなきゃいけないのか理解できない。

「電話してこなかったよな?」

 いつも兄の家にこうしてくるときは電話なんてしていない。何曜日にバイトをするのかとかわかっているから、そんな必要はない。たとえ、ほかに用事があったとしても、合鍵があるから大丈夫。

「そんな、お兄ちゃんの行動は大体読めているから」
「おい、どういう意味だ?」
「ところで、私が来るまでどれくらい勉強をしていたの?」

 兄は顎に手を当てて、ほんの少し考えていた。

「一時間」

 それってしたうちにあんまりならないよね。まったく、学生なのだからもう少し真面目にすればいいのに。
 そう考えていると、携帯電話の着信音が鳴った。これは支樹のものだとすぐにわかった。メールのようだが、彼はきちんと見ないで、そのままパタンと閉じた。

「アドレスを交換しようか」
「あ、ごめんなさい。携帯を持っていない」
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