たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 兄が私達を交互に見ながら言うと、支樹がうなずいた。
 はじめに彼を見たときも思ったけど、綺麗に笑う人だな。

「どうした?じっと見て」

 気がついたら、ずっと支樹の顔を見続けていたみたい。

「学校でもてるだろうなと思って・・・・・・」
「結構支樹はモテるよな。女子がいつも見ているし、告白だってされる」
「どうでもいいよ。興味ない」

 支樹はあっさりと切り捨てた。

「あーあ、どこかに可愛い女の子はいないかな?」
「琴音は駄目」
「俺はただ見ていただけ」

 困惑する私を放っておいて、言い合いを始めていた。

「ほら、ご飯を食べよう。冷めちゃうよ」

 兄はまだ支樹を睨みつけていたが、支樹はお構いなしといった感じだった。
 夕飯を食べ終わって、片付けをしていたところ、支樹が手伝おうとしてくれたが、やんわりと断った。皿洗いをしながら、支樹のことを考えた。よく見ると、かっこいい人。
 年も離れていて、学校も違うので、会うことはそんなにないだろうとまだこのときは思っていた。

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