たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 彼の視線の先を追って行くと、公園だった。
 彼は手を握ったまま、公園に向かった。すぐそばにある自動販売機に金を入れてコーヒーを買った。再びそこに金を入れてこっちをチラッと見たので、ボタンを押した。金を払おうとしたが、いらないといわれたので、奢ってもらった。公園の中のベンチに座って、ゆっくりと飲んでいた。

「今日は来ないかと思っていた」
「なんで?」
「だって、授業が遅くまであるでしょ」
「今日は先生が用事で休講になった」

 なるほどと納得してからココアを飲んだ。

「今日は休みでよかった」
「嫌いな授業だったから?」
「いや、違う」

 真剣な表情になってわたしをじっと見た。

「琴音に早く会えたから」

 思わず顔を赤くしてしまった。私はそれを隠すようにうつむいたが、その様子が面白かったのか、支樹は笑っていた。

「またからかって・・・・・・」
「からかいがいがあるからだよ」

 まだ肩を震わせて笑っている。

「そういえば、飲み物を学校に持っていかなかったの?」
「いや、持っていったが、すぐに飲んでしまった」
「そうなんだ」
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