たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 再びレポート課題に目を向けてシャープペンを走らせた。

「今日の晩御飯は何だ?」

 兄は訊いてきた。私がまだ一緒に暮らしていなかったとき、あまり料理はしていなかった。

「ポトフとサラダだよ」

 すると満足そうに笑った。ジュースを飲みつつ、課題の続きをし始めた。ポトフをコトコトと煮込みながら、サラダを作った。おたまでポトフをかきまぜていると、兄と支樹がおいしそうと話し始めた。レポートはおわったのかな?コンロの火を消し、ポトフを皿に盛っている間に二人はキッチンにきていた。

「終わった?」
「終わったけど、まだいくつかあるな」
「お兄ちゃん、今日中にするの?レポート」
「いや、やりたくてもできねぇ。課題が何なのか発表されてないし、なぁ?」

 支樹は黙って頷き、ポトフを食べていた。彼は食事のときは無口になってしまう。今まで彼と何度か食事をともにしてきたが、ほとんど喋らない。言葉を発するときは決まってこういう。

「おかわりちょうだい」
「美味しい?」
「うまいよ」

 兄は言ってくれるが、支樹はちがう。

「味が薄い」
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