たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 いつもだったら、もう少しお喋りするのに、支樹は無言で歩いていた。
 目を閉じていたせいで段差に気づかないで、転びそうになっていた。地面に激突しかけたところをいつの間にか支樹に助けてもらっていた。

「あ、ありがと」
「世話を焼かすな」

 また歩き出すが、ふと気がつく。支樹に肩に手をまわされている。思わず彼の顔を見た。

「また転ぶかもしれないだろう。昔よく転んでいたから」
「お兄ちゃんが話したの?」
「そうだよ」

 小さいときはよくあちこちで転んで、いろいろな所で手当てをしてもらっていたなぁ。
 懐かしく思っていると、支樹が笑いをかき消すように咳き込んだ。

「よほど転んでいたみたいだな。想像つく」

 私は自然と早歩きになって、あっという間に家に着いていた。ドアを開けて入った後、閉めようとしたが、足でしっかりと挟まれていた。しぶしぶ中に入れてから鍵を閉めた。
 居間へ行って、読書をすることにした。支樹はジュースを飲んでいる。

「お兄ちゃんは?どこかに行っているの?」
「課題をやるから学校に残っているぜ」
「支樹は終わったの?」
「あぁ。今日提出した」
「課題、難しかった?」
「いや、しんどかった。量が多かったから」
「そうなの」
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