たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 読んでいた本をいったん閉じて、彼を見た。
 するとバッチリ目が合ったので、思わず目をそらそうとしたが、顎を掴まれてできなかった。

「どうした?構って欲しい?」
「ぜんぜん、構って欲しくない」

 力強く否定をしてみたが、スルーされた。今もじっと見ている。目をつぶってしまえばいいのだけれど、なぜかそれができない。どうすることもできずにいると、支樹は私の髪を撫でていた。撫でられる度にほっと安心する。 しばらくしてから玄関のあたりで物音がしたので、行ってみると、兄が帰っていた。

「ただいま。支樹が来ているだろ、何していた?」

 黙ったままも怪しいので、のんびりしたことにした。

「お兄ちゃん、おかえり」

 部屋から顔を出して言った。それを見て少し苦笑いしていた。

「俺はいつからお前の兄になった?」

 そう言いながら部屋に入って、鞄を置いた。今日は兄のバイトがない日なので、ひたすらいろいろなことを話した。学校や恋愛や、食べ物、ニュースのことなど。

「前にね、インターネットで見たら、とても美味しそうだったの。お兄ちゃん、バイトがない日に連れて行って」
「そこ知っている。俺も行きたい」
「お前ら・・・・・・」
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