たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「誠一、勝負するぞ」

 支樹の声にハッとして見てみると、ゲームを取り出していた。

「望むところ」
「・・・・・・それ、何の勝負なの?」

 さっきの和食屋、どちらが奢るかの勝負だ。

「当然負けた奴が奢るに決まっている」
「何回勝負にする?誠一」
「三回勝負にしないか?」
「いいぜ」

 二人の表情はまさに真剣そのものだった。

 結果、兄が負けて、支樹が勝者となり、私達はおなかが満たされたので、とても満足だった。

「美味しかったな!」
「うん!ごちそうさま」
「よかった。連れて行った甲斐があった」
「琴音、今度はどこに食べに行きたい?」
「えっと・・・・・・」

 またインターネットで調べることを伝えた。

「俺も一緒にやる」
「うん。そうしたら、お兄ちゃんに言いやすいものね。それぞれ違ったことを言ったら、大変だから」
「ということでまた頼む」
「おい、お前らいい加減にしろよ」

 ゲームで負けた上に奢らされた上に、また奢らされる。
 今日は美味しくいただくことができましたので、おなかをさすりながら笑みを浮かべて、のんびりと歩き続けた。
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