たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 改めて日程を決めて駅で待っているのだけれど、どこに行くのかわからない。待ち合わせの時間や場所を決めただけ。時計を見てみると、あと五分で待ち合わせの時間になる。あたりをゆっくりと見回した。

「待ったか?」

 背後で声をかけるから、思わずビクッとした。それを見て彼は笑っていた。

「悪趣味だよ。私で遊んでばかり」
「仕方ないだろう。反応が面白いから」

 ハアッとため息をついてから、歩き出した。

「どこに向かっているの?」
「このあたりにあるものが何かわかるか?」

 このあたりは飲食店やカラオケ店、靴屋などだよね。

「カラオケに行くの?」
「残念、はずれ」

 しばらく歩いていると、ショッピングモールが見えてきた。

「ひょっとして、あそこ?」
「正解」

 そういって、ポケットに手を入れ、飴を取り出して、私に渡した。ミルク味だ。
 お礼をいってから、早速食べてみた。甘さが口の中で一気に広がった。

「支樹、大学って楽しい?」
「楽しいぜ。行きたいか?」
「うん。どういうところに行きたいか、まだわからないけどね」
「お前がもう少し早くうまれていたらよかったな」
「何で?」
「そうしたら、同じ大学生だろ」
「そうだね。学校が違っていても、いろいろと情報交換とかできるしね」
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