たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「お腹が空いたな」

 時計を見ると、二時過ぎになっていた。

「何を食べたいの?」
「うーん、何でもいい」
「じゃあ、あそこは?」

 指さしたところは今川焼きを売っている店。
注文してから数分、それをもらって、どこの席に座ろうかと考えていると、いきなり腕を掴まれて引きずられ、椅子を引いて座らされた。

「支樹、いきなり引っ張らないで」
「どこにしようかとオロオロしただけでなく、何度か椅子とかにぶつかりそうになっていたな」

 笑いながらそういったので、頬を膨らませた。痛いところばかりついてくる。仕方ないじゃない。引っ張られたせいで、前が見えなかったのだから。

「いつまでも怒るなよ、食べようぜ」

 そういって、支樹は今川焼きを食べ始めた。おいしそうに食べている。
 目を閉じて息を吐いてから、食べ始めた。少しの間はお互い何も喋らないで食べていた。
 ふと、窓の外を見ると、少し暗くて、曇っていた。
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