たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 低い声で言われたのと私から少しも視線をはずさなかった。
 しばらく見つめ合った後、彼が笑い出した。

「な、何?」
「真っ赤になって。飽きないな」

 もっと面白くしてくるように要求してきた。

「そうやってどれだけの人を怒らせてきたの?」
「琴音だけだよ。こんなことをするのは」

 そんなことを言われても、ちっとも嬉しくない。

「俺は楽しい」
「お兄ちゃんはからかったりしないよ」

 話を続けようとしたが、人が増えてきたので、別のところへ移動しようと席を立った。
 少し先にアクセサリーや可愛らしい小物などを置いている店があったので、そこへ入った。ネックレスのところを見ると、雫型のネックレスが置いてあった。手にとって見てみると、気に入ったので、買おうかと思ったが、値段が高かったので、仕方なく諦めようと同じところへ戻した。

「どうした?買わないのか?」
「うん、ちょっと高いから」
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