たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 黙って後ろへ下がると、彼は追いつめるように前へ近づいてきた。壁にぶつかってしまい、前を見ると、彼の顔が間近にあった。顔が赤くなっていくのがわかる。横に逃げようとしたが、顔の横に両手をついてきたので、それができなくなってしまった。ぎゅっと目をつぶっていると、額に痛みが走った。

「まったく、話をちゃんと聞いていろよ」
「痛いな・・・・・・」
「デコピンしたから当然だ」

 彼はスタスタと歩いて行った。いつまでも立ち止まっていたら駄目なので、急いで追いかける。
 たくさんの店を見て回ったので、外へ向かった。いきなり彼が立ち止まったので、私はぶつかってしまった。その理由はすぐにわかった。空は黒い雲に覆われていて、激しい雨に加えて、雷まで鳴っている。

「駅までそんなに遠くないから行こうか」

 鞄から傘を取り出して差したが、二人で入るには少し小さかった。
 できるだけ濡れないようにそばによって、駅まで歩いた。駅が近かったのは本当によかった。ほっとして彼を見ると、自分より結構濡れていることに気づいた。

「ごめん。私のせいで・・・・・・」
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