たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 時計を確認すると、まだ夕飯の時間まで少しある。たくさん歩いたし、仕方ない。

「外食はしない。夕飯は家で食べるぜ。ここを左に曲がる」

 飲食店ではなかった。可愛らしい店で、動物のグッズがたくさんあった。客は女性が多かった。中にはかごの中にたくさん商品を入れている人もいた。

「ちょっと見てくるね」

 私が早く行こうとしていると、支樹は私の肩に手を置いて、やんわりと止めた。

「待っていてもつまらないから、一緒に行く」

 袋に入った動物の形をした飴があったので、少し悩んでから買うことに決めた。他には何かいい物はないかなと歩き出した。

「それ、あとで俺にくれるのだろう?」
「あげません」

 わざとらしく落ち込んだ支樹にかまわず、買い物を済ませた。足をゆっくりと回した。長時間外にいたから、さすがに疲れた。
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