たまごのような恋 殻を割ったそのとき
たまごのような恋5
 支樹のことを兄や友達に話す回数が多くなった。そのことに気づいたのは私だけでなく、周囲の人たちもそうだった。どんな話をしたのかとか、どういう所へいったのかなど、話をしてもきりがないくらいだって思えた。
 友達に彼のことを好きなのかと質問された。何も言っていないのに、友達は納得していた。告白すればいいのにと提案してきた。しばらく電話で話してから切った。体育座りをしたまま、下を向いていた。

「どうした?」

 いつの間にか兄が部屋にいた。なんでもないと言おうとしたが、すぐにやめた。

「支樹ってさ、昔、付き合っていた人とかいた?」
「いや、いない。あまり興味がなかったみたいだしな」
「そうなんだ」

 なんか前にも似たようなことを質問をした気がする。

「今は楽しそうだな」
「楽しそう?」
「お前のことをよく話すし、家にも頻繁に来るだろう」

 支樹、私がいないときでもいろいろ話すのね。
 何を話しているのかな。

「たとえば、どんな?」
「そうだな、今日はこういうことで騙したとか、琴音とこんな話をしたとかだな」
「会う度にからかってくるのだよ。多いときは一日に三、四回くらい」
「俺なら五回は騙せそうだな」
< 46 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop