たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「うまかった」
「良かった。じゃあ、次は薬だね」

 薬とお茶を取ってきて、渡した。これもすぐに飲んで、眠ろうと横になった。布団をきちんとかけてから、片付けをした。タオルで手を拭いていると、ドアが開く音がしたので、開けると、アイスを持った兄だった。

「おかえり」
「ただいま、あいつは?」
「今は眠っているよ。ちゃんと食べたし、薬も飲んだ」
「そうか」

 アイスクリームを見せて、どれがいいかきいてきた。アイスは袋に四個入っている。
 少し迷ってから、チョコを選ぶと、やっぱりと笑った。私は再び袋の中を覗き込んだ。

「一個だけ」

 そう言って、アイスを冷凍庫に入れた。

「取るつもりじゃなくて、支樹はどれを食べるかなと思ってさ」
「まぁ、それはあいつが起きれば、すぐにわかることさ」

 それから数時間経過してから、支樹は起きた。おはようと声をかけると、まだ寝ぼけているのか、頷いただけだった。

「熱計ろうか、はい。体温計」

 今度はちゃんと受け取ってくれたと思ったが、そのへんに捨てられ、目の前に大きな手が伸びてきた。
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