たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「うん。ましになったな」
「誠一、なんでお前だよ?」

 支樹はすぐに顔をしかめたが、兄はそのようなことはお構いなしだった。

「アイス、食べるか?」
「こらこら、質問に答えろよ」
「いつまで琴音に甘えている気だ?」
「いいじゃないか。な?」

 目線をこっちに向けて笑った。そのあとすぐにアイスを要求した。
 何味にするかを聞かずに、兄は生チョコアイスを持ってきた。

「それほどひどくなくてよかったな。風邪」
「そうだね。私は毎年冬に風邪を引いてしまうよ。咳が止まらないときは焦る」
「じゃあ、今度は俺が看病してやるよ」

 まかせろと言いたげにやる気が滲み出ていた。

「いい。お前がまた風邪を引くと大変だからな」

 私が声を発する前に兄が言った。それに対し、ムスッとした。

「俺は滅多に風邪を引いたりしないが、また引いたらいいのに」
「苦しいだけだよ・・・・・・」
「琴音がいてくれるから」

 この人の癖はもうどうすることもできない。
< 53 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop