たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 指差す方向を追って、彼女は納得したように首を縦に振った。

「本当ね」

 そういって、ふんわりと微笑んだ。男子がこれを見たら、見惚れて何も言えなくなるだろうな。あれ。そういえば何でこの人は私にいきなり声をかけてきたのだろう。

「ここから一時間くらいよね。高校まで行く時間」
「はい。そうです・・・・・・」
「その高校の生徒でしょ?」
「はい」
「前に見たことがあるの。そのときは友達とカラオケに行っていたよね」
「そうですね」

 夏休み入る前だった。この人に見られていたのか。

「あの、あなたも歌いに?」
「違うわ。今日みたいに散歩をしていたの。またこうして会えると思っていなかったから会えてよかった」

 私はどういっていいのかわからず、黙り込んでしまった。

「今日は買い物?」
「まぁ、そんなところです」
「気になったのだけど、私も高校生よ」
「そうなのですか?来年から大学へ行かれるのですか?」

 彼女はクスクスと笑い始めた。

「はずれ。高校一年生よ」

 これには驚かされた。大人っぽくて、落ち着きのある雰囲気だからてっきり自分より年上だと、ばかり思い込んでいた。
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