たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「手伝うよ」

 そう言って、ノートを半分ひょいと持ち上げた。

「桐野さん」
「初美って呼んで。私も琴音って呼ぶから。あぁ、前から呼んでいたよね」

 ニコニコと笑っている顔を見続けていたら、ゆっくりと歩き始めたので、後を追うようについて行った。
 ノートを持って行った後、教室へ戻って、家に帰ろうとしたら、グイッと手を引っ張られた。

「もう帰るの?それとも、何か用事があるの?」

 初美だった。彼女はこうして人を驚かすのが好きなのかな。
 驚いて無言のままでいると、彼女が口を開いた。

「良かったら、どこかに行かない?」 

 今日は支樹が家に来る。少し悩んだけれど、一時間までならいいよと伝えた。

「一時間以上になると、どうなるの?」
「えっと、お兄ちゃんの友達が来ているから、夕食の支度をするの」
「毎日料理を作っているの?すごいね」
「そんなことないよ」

 たまに失敗してしまうしね・・・・・・。

「あのね、学校の近くにいくつか店があるでしょ。買い物に付き合って」
「いいよ。何を買うの?」

 初美は顎に指を添えて、少し考えていた。

「うーん、いろいろね」
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