たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 それからやっと二人の時間が始まり、小さな手を握った。振り払われないことはずっと前から知っているが、たまには琴音から握ってくれたらいいのにと、歩きながら思った。

「今日は俺が何か頼むとき、嫌はなしだから」
「拒否権が欲しくなるようなことを頼まなければいいよ」
「無茶なことはさせないから」
「本当?」
「もちろん。ただし、きちんとしてくれなかったら、もう家に行かないから」

 今まで当たり前のように家に遊びに来て、一緒に過ごしていたので、急にそれがなくなってしまうということは深刻な問題だ。

「やだ・・・・・・」
「じゃあ、してくれるな?」

 笑顔で答えを待っている支樹に対し、小さく頷く。

「脅している・・・・・・」

 かなり小さく囁いたのだが、耳に届いてしまったらしく、あっさり否定した。

「じゃあ、さっそくしてもらおうか。手を出して」

 仲良く手を繋ごうと、琴音の前に手を出した。しばらく見た後、まるで飼っている動物がお手をするように手を置いた。

「あのさ、ペットじゃないのだから」
「おかしい?」
「まぁ、いいや」
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