たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「この子に何をしていた?」
「えっと、話を・・・・・・」
「ふーん、乱暴な話し方だな」

 思ってもみなかった訪問者が来て、頭がいっぱいのようだった。今にも泣きそうな顔をしている二人に対し、支樹は睨みつけた。

「まだこいつに話があるのか?」
「いいえ、ありません」
「次に何かしたらどうなるかわかるよな?」

 二人は頷き、来た道を全速力で戻って行った。

「支樹、教室にいたよね?」
「お前が連れ去られるところを友達が見ていたらしく、急いで俺に言いに来たから」
「琴音、大丈夫?」

 初美がそっと労わるように、私の背中を撫でた。

「くすぐったい」
「お前は・・・・・・」

 支樹は呆れ顔で、初美は苦笑いをしていた。

「お腹空いた・・・・・・」
「何か食べに行くか?」
「うん。もうとっくに交代の時間だしね」
「じゃあ、楽しんできてね」
「初美は食べたの?」
「うん。少しね」

 一緒に行こうと誘ったけど、邪魔をしたくないからと断られた。

「明日は一緒に店を回ろう」
「うん。いいよ」
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