鬼上司のとろ甘な溺愛


多分、電話の相手はうちの課の営業マンである上野だろう。恵那と同期の男性社員なのだが、いつもドジを踏んでいて頼りない。
爪が甘いというかどこか不器用というか要領が悪いというか。
とにかく、仕事に厳しい課長がさらに厳しくなる相手No.1である。

でもめげずに頑張る姿は評価が高いのだけれど。

隣の恵那はまだ話したそうだったが私が仕事モードに入るとしぶしぶパソコンに向き直った。

課長はまだ電話越に怒りながら外出の準備を始めている。
受話器を肩と耳に挟みながら書類を整え鞄にしまうその動作は出来る男と言う感じで、ルックスも良いことからちらちらと女性社員が仕事をしながら盗み見ていた。
確かに目の保養にはなるけれど。

しかし! 今日の私はそんなことに構っている暇はない。
今日は定時に帰るんだ、と決めていたからだ。

営業事務のOLは実は何かと忙しい。
電話対応や書類の打ち込みなどやることは多かった。
金曜日は特に、明日から休みのため終わらせておきたい仕事は山ほどある。

金曜日と月曜日は残業になることがしばしばあった。

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