鬼上司のとろ甘な溺愛
「わかりました」
「すまない」
神林課長は急いでいるのかそう言ってすぐにオフィスを出て行ってしまった。
その後姿を見送ってため息をつく。
「大変ですねぇ、陽菜子先輩」
恵那が気の毒そうな顔で見ている。それをじっとりと見返し、口を尖らせた。
「なら恵那ちゃんがやる?」
「私に出来るわけないじゃないですかぁ」
間延びした返事を返される。
だよね。
資料をパラパラとみると、後輩の恵那に任せるのはかわいそうと思える内容だ。
しかも最近はほぼ神林課長の秘書状態になっている私だからこそ任された書類である。
何で私が、と思うが春に先輩が産休に入ってしまったのだから仕方がない。
ガックリ肩を落とす。
やるしかないか。
私は恨めしげに神林課長が出て行った出入りを見つめてからパソコンに向き合った。