鬼上司のとろ甘な溺愛


私――雪村陽菜子はこの文房具メーカー関係の会社に入って5年目のOLである。
目鼻立ちははっきりしている方だが、隣に座る恵那ほど派手な顔立ちではない。
どちらかと言うと地味なタイプだろう。
性格は真面目。任された仕事は嫌とは言いにくい。与えられた仕事を黙々とこなす方だと思っている。

そして。

先ほど私に仕事を与えて出て行った神林和馬課長。
我が営業課の課長という肩書きだが、実際は33歳の若き上司。
背も高くてルックスも良いのだが、仕事に対しては他人にも自分にも厳しいためよく部下は怒鳴られることが多い。
それだけなら疎まれやすいのだが、怖いだけではなく部下のフォローは忘れないからそこそこ信頼は厚かったりする。
そこが評価されて出世コースに乗ったのだと噂されている。
仕事に厳しい所が難点ではあるが、ノンフレームのメガネの奥はキレイな二重でその甘いマスクは“黙っていれば最高”なんて言われている。
そのルックスが営業にも有利に働いているともいわれている。が!
しかしどんなイケメンでも、今の私には恨めしい相手だ。


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