お前と月と。
「大也。ご飯よ!」
母親。父親に何されても黙って見てる、偽善者。
そして、俺の家庭は仮面家族だ。
見た目だけは良く見せる。…が、本当はボロボロの家族関係。
姉は、父親に甘やかされ、付け上がっている。
そんな俺の安らぎは、夜、月の良く見える橋へ行く事だった。
そこでは、毎日、同じ時間が流れる。
夏は涼しく、冬は温かい。
その橋は、"月橋"と呼ばれた。
「今日も同じだ…っ」
爽快。毎日変わるのは、月だけだった。
――――今日は、人がいた。
まるで、月が好きかのように、月を眺める少女。
透き通った肌に、大きく、くりくりとした目。
ととのった鼻に、ふわりとした唇。
全てが、美しい。そんな少女だった。
「あの…」
少し、戸惑った。だけど、どうしても、話してみたかった。
…たとえ、未来がどうなろうとも。