お前と月と。
―惹かれる―
それから家に帰ると、母親が心配そうな顔をしていた。
…嘘だと分かっていても、
…本気じゃないと知っていても、
俺は「ただいま」と呟いた。
"仮面家族"をまた、守ってしまった。
* * *
朝、学校。
家族と呼ばれる人達が起きないように、
静かに、
早く、
家を出る。
学校では、少しモテる方だと思う。
勿論、勉強も容易く熟す。
つまらない。
それでも、つまらないのだ。
…ふと、夜を思い出す。
今までに、見たことの無い美しさ。
今までに、感じたことのない、胸の高鳴り。
時間よ、止まれ。
そう、言ってしまいそうなくらいの、幸せ。
その時間とは比例して、今では時間がすぎるのが、待遠しい。