お前と月と。

―惹かれる―








それから家に帰ると、母親が心配そうな顔をしていた。



…嘘だと分かっていても、


…本気じゃないと知っていても、



俺は「ただいま」と呟いた。



"仮面家族"をまた、守ってしまった。




* * *


朝、学校。



家族と呼ばれる人達が起きないように、

静かに、

早く、

家を出る。




学校では、少しモテる方だと思う。



勿論、勉強も容易く熟す。



つまらない。



それでも、つまらないのだ。



…ふと、夜を思い出す。


今までに、見たことの無い美しさ。


今までに、感じたことのない、胸の高鳴り。



時間よ、止まれ。



そう、言ってしまいそうなくらいの、幸せ。


その時間とは比例して、今では時間がすぎるのが、待遠しい。



< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop