ツンデレ竜とお姫様
竜、ツンになる
「ああ、もう、嫌だー!」


三秒前まで黙々とシャーペンを走らせていた目の前の男が、突然机に突っ伏した。


あたしはそんな男にちらりと視線を投げる。


「じゃ、あたしは必要ないね。帰るわ」


頭の悪いあんたのお守りなんかごめんだし。


そう言い放って椅子から立ち上がろうとする。


「いやいや、必要だから。竜希、まだ帰んな」


長い腕が伸びてきて、あたしの右手を捕まれる。


「何よ、そこまでやれるんならあとは一人でできるでしょうが」


教科書とプリントと辞書。今目の前の男が対峙しているのは英語。


正直一人でできるものだ。単語は辞書があれば楽勝だし、和訳だって頑張れば……。


「俺の英語のできなさ舐めてんの? 俺はわからない表現があると途端に太刀打ちできなくなんの」


自慢げに言うけど、それ、自慢どころかけなすのもどうかと思うよ。


「あたし、帰って予習したいんだけど」

「頼むからあと十分だけ。ここの訳し方がわかんなくて」

「頑張れ」

「彼氏を見捨てる彼女、お前以外にいねーぞー」


いや、それはいると思うけど。


恥ずかしくも目の前の男、姫川宏一(ヒメカワコウイチ)はあたし、本間竜希(ホンマタツキ)の彼氏である。


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