ツンデレ竜とお姫様
竜、火を噴く
「ねー、竜希」

「しつこい」

「まだ五回目だよ」

「十分しつこいから」

「じゃあ、竜希」


もう無視。


「俺と夜の営みをしよっか」


……これはさすがに無視できない。


「昼間っから盛ってんな、てめー」

「当然」


爽やかなこの笑顔だけを見たら、あたしも少しは素直に……というのは嘘だけど。


ちなみにこの教室には誰もいないことを言っておく。


そんなこんなで、かなり変なきっかけで付き合うことになったあたし達(ちなみにあのあとは健全に一緒に帰ったことを追記しておく)。


ドMは承知で一緒にいるけど、こんなに昼間っから変態発言をする奴だとは思わなかった。


後悔している。あの時寝顔に魅せられてしまったことに。無防備に覗いた鎖骨にドキドキしてしまったことに。


だってさ、考えてもみてくださいよ。


普通にしてて、女の方が大きいのだ。どこまで逆転してれば気が済むのだ。


漫画じゃないんだから。どうしても気にしてしまう。一緒に歩いててあたしの身長が恥ずかしくなる。


姫川は気にしていない様子だ。「竜希が高かろうが低かろうが関係ないよ。竜希だから」と、いかにも爽やかな好青年が言いそうなことをのたまった。


「ねー竜希」

「今度は何」


気楽なものだ。


気にしているあたしが悪いのだろうか。


「今度のデート、映画見に行こう」

「嫌だ」

「なんで?」

「嫌なもんは嫌」


あたし達は公然の前でデートをしたことが一度もない。


学校ではすっかり有名だから気にしていないけど。


照れ臭いってのもあるし、何より逆転しているのが嫌だった。


決して姫川か嫌いなわけではない。じゃなきゃ今こうして付き合っていないし。


自分自身が嫌なのだ。自分の長身にも、それを恥ずかしいと思う自分にも。


それでも、姫川が悪いとは思いたくない。


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