goldscull・不完全な完全犯罪Ⅲ
 「この頃彼女が冷たくて……、解ってます。この名前がイヤだってこと。でもやっと得たチャンスなんです」

売れない時代に支えてくれた彼女。

でもやっとデビュー出来ると思ったら、ボンドー原っぱなんてふざけた名前を付けられた。

だから彼女が怒ったらしい。


(――解る気がする。

――そりゃそうだ)
と思った。


「だからと言う訳でもないと思いますが、浮気を疑いまして……、この前も彼女につきまとう男性をストーカー呼ばわりしたって怒られたし……、ひょっとしたらその相手かも? などと勘繰りまして」




 (――えっ、ストーカー!?)

ドキッとした。
さっきゴールドスカルで垣間見たデパートの従業員専用エレベーター前のスキンヘッド男性変死事件。
それと重ねて合わせたせいなのかも知れないが。


「そのストーカーって言うのが……」
何故か歯切れが悪い。


「言いたくない人か?」
叔父さん聞くとソイツは頷いた。


(――ストーカー……

――まさか同一人物が!?

――そうだよな。
目の前にいるこんなひ弱そうなヤツが木暮の兄貴の首を落とすはずがない。

――きっと同一人物なんだ)


俺は一瞬、とんでもないことを考えていた。




 (――事件に巻き込まれる!!)
俺はそう判断していた。
何故だか解らない。
でも、その時気付いた。
俺はみずほのコンパクトを握りしめていたことに。


(――みずほ……

――又邪悪な者のせいか?)


俺の恋人岩城(いわき)みずほはクラスメートの企みによって殺されていた。

キューピッド様をやる振りをして、殺したい相手を名指しするために。


俺もみずほも字は違うけど、同じ《いわきみずほ》だったのだ。
どちらでも良いと判断した百合子。
俺を助けたかった千穂。
でも千穂はみずほの死を望んでいたんだ。


千穂は俺に恋をしていたらしいんだ。
でも俺はみずほとラブラブ。
だからみずほが死ねば、俺が振り向いてくれると思ったようなのだ。




 結局叔父さん仕事を受けた。
俺はまず携帯に依頼人の彼女の写真を取り込んだ。
ついでに叔父さんの事件の容疑者と、ラジオと呼ばれた男性の写真も入れた。

もしすれ違った人がその人かも知れない。
なんてことがあるかも知れないと思って。


俺は少しだけでも、叔父さんの役に立ちたいと思っている。

犯人逮捕。
それが叔父さんと叔母さんを癒すことだと思っているから。

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