goldscull・不完全な完全犯罪Ⅲ
 「やっぱりな。実は俺も想像してたんだ。ホラ良くロッカーはヘッド何とかってやるだろう?」


「あぁ、ヘッドバンキングか?」


「あれやりながら、それでも必死に鬘を押さえてる兄貴を思い浮かべて……」

何処からか噛み殺したような笑い声が聞こえた。

良く見ると、それは木暮だった。
木暮の肩が小刻みに震えていた。

泣いている訳ではないのだ。


俺もそれを見ながら、遂に笑い出していた。




 「写真見る?」

一頻り笑った後で、タイミング良く木暮が言ってくれた。

実は俺は写真の中身を確かめたくて此処に来たのだった。

そう……
金髪かどうか、自分の目で見て納得させるつもりだったのだ。




 俺は中身が見たくて仕方なかった。
だから、すぐに表紙を開けた。


でも木暮が用意したアルバムの中にはこれと言った物はなかった。


(――一体何を探すつもりなんだ?

――いや、判らない。

――でも何かしらあるはずだ)

俺は自問自答を繰り返していた。


「兄貴はロッカーになっても、茶髪には躊躇していたらしいんだ」


「ん、何で?」


「兄貴は又介護ヘルパーの仕事に戻るつもりだったって」

木暮の言葉を受け、俺は頷いた。


(――そうだよな。奥さんのことを考えるとな)

俺は木暮の兄貴の気持ちが解った気でいた。




 彼は茶髪も躊躇していた。

なのに金髪で……
しかも亡くなる時はスキンヘッドだった。


ボンドー原っぱもそうだったよな。
亡くなる直前に二人ともスキンヘッドになっていたんだ。

木暮の兄貴は確かに自分の遺志だ。
でもボンドー原っぱは違う。


ボンドー原っぱは一体誰にツルツル頭にさせられたのだろうか?


俺が考え事をしているの見て、木暮が肩を叩いた。




 「兄貴が使っていた携帯電話があるけど見る?」

待ってましたとばかりに俺は頷いた。


「でもな……、中に写真は無いよ」

木暮が妙なことを言った。


「どう言うことがそれ?」


「だから削除されていたんだ」


「えっ、削除!?」


「うん、それしか考えられないんだ。それに記憶媒体も無くなっていたんだ」


「記憶媒体って、マイクロSDのことか?」

木暮は頷きながら席を外し、別のアルバムを持って来た。


でもその中にも変わった写真は無かった。


俺は結局、木暮の兄貴の携帯を手に取っていた。

削除されたと言う写真が物凄く気になったからだった。


削除された画像などあるはずもないのに。

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