goldscull・不完全な完全犯罪Ⅲ
ロック好きな彼女
 報道陣が見守る中、しめやかに原田学の葬儀が執り行われようとしていた。

俺は木暮と示し合わせて最後尾に並んでいた。


「おい瑞穂。原っぱの出身地って此処なのかな?」
木暮が不思議そうな顔をして聞いた。

そうなんだ。
何故か俺の地元の斎場が葬儀会場だったのだ。


「いやー知らないな。でも此処は、地元の人しか受け入れないと思うよ。だから、もしかしたらね」


「殺された現場が此処だからかな?」

木暮はそっと耳元で囁いた。




 二人とも学生服だった。
俺は共学。
木暮は男子校。
地元のそれぞれの制服に身を包んでいた。


だからなのか?
二人に興味を持ったレポーターらしい人が近付いて来た。


「亡くなられた方とのご関係は?」
不意にマイクを向けられた。


(――ワイドショー!?)

俺の頭の中に、取材されて応える人達の映像が浮かんでいた。


(――何て言ったら使ってもらえるかな?)

そんなこと思い浮かべながら頭を振った。

俺は何時の間にかミーハー気分になっていたのだった。




 (――凄いな。やはり人気者……ってゆうか、あんな殺された方をしたからかな)
そう思いつつ……


「えっ、ああ仕事関係です」

俺は咄嗟にそう答えた。


そう、確かに探偵の仕事だったのだ。


「ああ、解りました。何と言うグループですか?」

俺達をパフォーマーとでも思ったのか、それとも爆裂お遊戯隊の話でも聞き出したいのか……

レポーターはマイクを向けたまま暫く其処にいた。


でも俺はしゃべりたくはなかった。
木暮のことが知れたらまずいと思ったからだった。


もし木暮が木暮敦士の実の弟だと解ったら、きっとパニックになるかも知れないと思っていたからだった。




 ワイドショーの格好のネタになって、痛くもない腹を探られる。
それでいて、中途半端で終わると思った。


第一、俺が感じた木暮の兄貴の意識。
あのゴールドスカルの情報も解らない内にむやみやたらの発言はまずいと思ったのだ。




 「あれっ、君は磐城君じゃないか?」
そう言いながら近付いて来たのはみずほの事件の捜査をしていた刑事だった。


「あ、あの時の刑事さん」

俺は思わず言っていた。


でもそれは失言だった。
俺の言葉に興味を持ったのかレポーターが又近付いて来たのだった。


刑事は私服だった。
勿論聞き込みのためだ。
それを俺はバラしてしまったのだった。


(―ヤバい……)

俺は恐る恐る報道陣の様子を伺った。
心なしに顔つきが変わったように思えた。


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