goldscull・不完全な完全犯罪Ⅲ
哀しい女の性
そんなことがあってから僅かばかりの時間が流れた頃だった。
俺と木暮は叔父さんの探偵事務所にいた。
あの女性が現行犯逮捕されたと呼び出されたのだ。
それは俺の霊感を公にしたくないと思った叔父さんの計らいだった。
経緯はこうだ。
ボンドー原っぱの葬儀の日に俺達に声を掛けてきたのは、やはりロックグループのボーカルだった。
彼女を愛してはいたが、浮気者だった。
それにキレた彼女が彼をスキンヘッドにして、又殺害を計画したとのことだった。
でも彼女は犯行を否認していた。
行方不明になっていたゴールドスカルのペンダントヘッドを何故彼が持っているのかが解らなくて、確かめようとしただけだと言っていた。
「あ、そうだ思い出した。確かに彼女はあのペンダントを気にしていたな」
『ねえ、そのペンダントどうしたの?』
あの日、彼女は意を決したように言った。
何故だか解らないけど、俺にはそう聞こえたんだ。
『私が買った物に良く似ているの。ずっと探し続けているんだけど見つからないのよ』
確かにMAIはそう言っていた。
(――あれっ!?
――それじゃ誰が渡したんだ?
――木暮の兄貴にペンダントを渡したのは一体誰なんだ?)
俺はあの日のやり取りを思い出しながら、何故か引っ掛かっていた事実を思い出していた。
(――でもまあ、そんなこと別にいいか。
――そうだよな。それでいいんだよな……?)
俺は又例によって、みずほのコンパクトに聞いていた。
要するに、俺の手柄だったってことだから。
あの日木暮と女装して女子会に行かなければ解らないことだったのだ。
第三の犯行が事前に防げたようだ。
俺はそれだけで満足していた。
その裏に卑劣な女の企みがあろうことなど疑う余裕もなかったのだ。
でも俺はその後の桜井刑事との会話で、彼女と木暮敦士との本当の愛を目の当たりにする。
彼女は芸能界で生きる木暮敦士を裏から支えようとしていただけだったのだ。
歌手の恋人の宿命とも言える、ファンと会社の間で揉まれた末に別れさせられようとしていたのだ。
彼女は被害者だったのだ。
会社の方針だと彼女は思っていた。
でもそれは、ストーカー事件で明るみに出る。
彼女はその時理解したようだった。
彼女はMAIと言う、今売り出し中のヘアメイクアップアーチストだった。
木暮敦士との出逢いは修行中のことだった。
MAIは母の美容院で働きながら国家資格を取って、東京を拠点とするグループの一員となって頑張っていた。
木暮敦士は親の反対を押しきって、音楽の道へ進んだロッカーだった。
生活費など出して貰えるはずもなく、アルバイトに明け暮れていた。
そんな時同じ出身地で、売り出し中のMAIと出逢ったのだった。
MAIの母も端正でありながら優しい木暮敦士が気に入り、二人は婚約したのだった。
木暮敦士は既に二十歳を過ぎていた。
親の承諾もなく婚姻出来るのだ。
二人の前途は明るく輝いているはずだった。
木暮敦士は益々ロックに打ち込んだ。
MAIもそれで良いと言ってくれていた。
だから茶髪のロン毛の鬘をやめて、金髪にしたのだった。
時には、MAIの母も混じり親子ゴッコ。
仲睦まじい生活。
二人は本当に幸せだった。
勿論弟の悠哉のことを忘れた訳ではない。
それでも家族には言わなかった。
そんな時。
木暮敦士の才能を見出だした後にマネージャーになる女性が接近して来た。
マネージャーは木暮敦士が気に入り、心血を注ぎ込んだ。
売り込みに次ぐ売り込みで、木暮敦士はやっとメジャーデビュー出来たのだった。
木暮敦士の甘いルックスと張りのあるボイスは、ファンの心をくすぐった。
でもそれはあくまでも仕事だった。
木暮敦士は決してMAIを裏切ったりしなかった。
俺と木暮は叔父さんの探偵事務所にいた。
あの女性が現行犯逮捕されたと呼び出されたのだ。
それは俺の霊感を公にしたくないと思った叔父さんの計らいだった。
経緯はこうだ。
ボンドー原っぱの葬儀の日に俺達に声を掛けてきたのは、やはりロックグループのボーカルだった。
彼女を愛してはいたが、浮気者だった。
それにキレた彼女が彼をスキンヘッドにして、又殺害を計画したとのことだった。
でも彼女は犯行を否認していた。
行方不明になっていたゴールドスカルのペンダントヘッドを何故彼が持っているのかが解らなくて、確かめようとしただけだと言っていた。
「あ、そうだ思い出した。確かに彼女はあのペンダントを気にしていたな」
『ねえ、そのペンダントどうしたの?』
あの日、彼女は意を決したように言った。
何故だか解らないけど、俺にはそう聞こえたんだ。
『私が買った物に良く似ているの。ずっと探し続けているんだけど見つからないのよ』
確かにMAIはそう言っていた。
(――あれっ!?
――それじゃ誰が渡したんだ?
――木暮の兄貴にペンダントを渡したのは一体誰なんだ?)
俺はあの日のやり取りを思い出しながら、何故か引っ掛かっていた事実を思い出していた。
(――でもまあ、そんなこと別にいいか。
――そうだよな。それでいいんだよな……?)
俺は又例によって、みずほのコンパクトに聞いていた。
要するに、俺の手柄だったってことだから。
あの日木暮と女装して女子会に行かなければ解らないことだったのだ。
第三の犯行が事前に防げたようだ。
俺はそれだけで満足していた。
その裏に卑劣な女の企みがあろうことなど疑う余裕もなかったのだ。
でも俺はその後の桜井刑事との会話で、彼女と木暮敦士との本当の愛を目の当たりにする。
彼女は芸能界で生きる木暮敦士を裏から支えようとしていただけだったのだ。
歌手の恋人の宿命とも言える、ファンと会社の間で揉まれた末に別れさせられようとしていたのだ。
彼女は被害者だったのだ。
会社の方針だと彼女は思っていた。
でもそれは、ストーカー事件で明るみに出る。
彼女はその時理解したようだった。
彼女はMAIと言う、今売り出し中のヘアメイクアップアーチストだった。
木暮敦士との出逢いは修行中のことだった。
MAIは母の美容院で働きながら国家資格を取って、東京を拠点とするグループの一員となって頑張っていた。
木暮敦士は親の反対を押しきって、音楽の道へ進んだロッカーだった。
生活費など出して貰えるはずもなく、アルバイトに明け暮れていた。
そんな時同じ出身地で、売り出し中のMAIと出逢ったのだった。
MAIの母も端正でありながら優しい木暮敦士が気に入り、二人は婚約したのだった。
木暮敦士は既に二十歳を過ぎていた。
親の承諾もなく婚姻出来るのだ。
二人の前途は明るく輝いているはずだった。
木暮敦士は益々ロックに打ち込んだ。
MAIもそれで良いと言ってくれていた。
だから茶髪のロン毛の鬘をやめて、金髪にしたのだった。
時には、MAIの母も混じり親子ゴッコ。
仲睦まじい生活。
二人は本当に幸せだった。
勿論弟の悠哉のことを忘れた訳ではない。
それでも家族には言わなかった。
そんな時。
木暮敦士の才能を見出だした後にマネージャーになる女性が接近して来た。
マネージャーは木暮敦士が気に入り、心血を注ぎ込んだ。
売り込みに次ぐ売り込みで、木暮敦士はやっとメジャーデビュー出来たのだった。
木暮敦士の甘いルックスと張りのあるボイスは、ファンの心をくすぐった。
でもそれはあくまでも仕事だった。
木暮敦士は決してMAIを裏切ったりしなかった。