あいのうた



「その時にいた従業員はずっと親父について来てた人だから、いきなり俺みたいな若造に代替わりしてついていけずに辞めちまうし、俺はこんなだから接客には向いてねーし」





『…すみません、やめます』

『……勝手にしろ』





「向いてねーのかなって思ったこともあるけど、やるしかねーから続けて…そしたらそのうち堂上やハルが入ってきて、やっと今の形になれた」





『ハル、5番テーブル呼んでる!』

『はーいっ…あ、堂上さん!追加でサラダ一つお願いします!』

『はいよ…ってオイ店長!またドレッシング切れかけてんぞ!』





「男共の顔目当ての客ばっかってのは不本意ではあるけどよ、それでも好きな仕事してそれなりに稼げてる。それだけで充分だってやっと思える頃にはもうこの歳だ」

「……」



トラはそう話して、私の頭をぐしゃぐしゃと乱すように撫でる。



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