光の中のラビリンス[仮]
もしかしなくても、失敗してしまったのだろうか。




飛び降りる前と何ら変わりないみすぼらしい衣服。傷だらけの腕や足。




先日殴られたばかりの腹の痣は布が擦れるごとに未だじくじくと痛みを訴え、飛び降りる寸前に切ってしまった腕には血がにじんでいる。




……間違いない。どうやら自分は、死ぬことに失敗してしまったらしい。




少女はきつく唇をかみしめ、力の限り両の拳を握りしめる。




最悪だ。失敗してしまうなんて。




この世界とまだ付き合っていかなければならないなんて。




噛みしめていた唇が切れて、口内に鉄の味が広がる。





それに眉をひそめると、少女は背後にいるであろう少年を睨みつけた。







「……あなたが、私を助けたの?」





怒りを込めた瞳で見つめ、握りしめていた拳に力を込める。




彼女の内心など露ほども知らない彼は、少し不思議そうにしながら小首をかしげた。





「そうだけど……?」





嘘偽りのない真実の言葉。





それをきいた瞬間、ともすれば彼の胸倉をつかみそうになるのを懸命にこらえる。




言いたいことは百もあったけれど、それを全て飲みこんで少女は忌々しげに目を眇めた。







「余計なことを……」





吐き捨てるように、彼女は言う。








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