ひまわりに
思い出という名の記録

Episode9『陽輝は忘れた。』


「あ”~~!
アタシん部屋、男だけやないかい!
むさくるしい言うねん!」

現在、奈々の部屋に
涼、翔、オレはお邪魔しているところ

ー結局、
放課後になっても
雷樹は戻ってこなかった。
体調が悪いままで・・・
帰ったらしい。

「うるせぇよ!涼のためだろ?」

「せやけどぉ・・・」

たしかに、
自分の部屋に男子3人が
入ってくるなんて。
むさ苦しいことこの上ない。

「だいたい、
アタシん部屋男
3人もはいらんゆーねん!!」

「奈々・・・いい加減
あきらめろって・・・。」

「そういう翔が
一番デカイやろ!?」

「ごめんね・・・?
僕のせいで・・・。」

「・・・涼はエェねん。
小柄やし。」

涼が誤ったとき、
奈々の顔がこわばった
・・・のに気づいたのは
オレだけみたいだった。
奈々は・・・
涼に気を遣わせることを、
極力避けようとしている。
オレらもいるし、
頼ってくれても
良いと思うんだけど・・・
なんか1人で頑張ってる。

「あー・・・これや!
卒アル、懐かしぃわー
去年の夏やなコレは・・・。
こっちが冬休みで・・・。」

奈々の大きな独り言とともに、
ここ数年のアルバムが
山のように現れる。

そんな中、急に翔がいった。

「・・・・おい、奈々。
いつだかの夏、
みんなでビデオカメラ
かったよな?」

「・・・せやったかなぁ~?
どないしたん?急に・・・」

「俺も・・・
今、思い出したんだけど・・・・。
あれ、埋めたまんまじゃね?」


しばらくの間、

「う・・・・ああぁぁぁぁぁぁあ!」

奈々が急に叫ぶ。

オレと涼は全く検討がつかず
顔を見合わせた。

「せやぁ・・・
完全に忘れとったぁ~・・・!」

「おいおい、
オレなんのことか
さっぱりなんだよ!」

「奈々、陽輝にせつめいしろ!」

奈々の話しによると
ーオレ達は小6の夏、
体育館裏にある木の根元に
タイムカプセルと言って
いろいろ埋めた
(言いだしっぺは、もちろん雷樹。)
 高校にみんなが入学したら、
その時に掘り返そう。
ということだった(らしい)が、
皆すっかり忘れており
その当時、
皆で金を出し合って買ったという
ビデオカメラがその中にある。
ということらしい。

言われてみると、
そんなこともあった。
雷樹が、ある日突然
『皆でカメラを買って、
思い出を映像で
記録しようじゃないか!』とか
言い出したんだ。

「あー、
アレ1人1万くらい
出したんだよなぁ・・・。」

翔が、頭をかきながら言ってる。
さすが小学生、
金余ってたんだろうな・・・。

ーって!

「5万円もしたカメラを
土に埋めるって!?
そんなことってあるの??」

オレが言う前に涼が言った。
5万なんて、
かなりの大金だったはずだ。

「しっ・・・
仕方あらへんやろぉ~?
雷樹の考えることなんて、
いつもそんなんやし・・・。」

あ”~~、
ハッキリとは思い出せないけど
想像がつく。

「君ら、けっこう無茶するねぇ。」

「涼、他人事じゃあらへんで?
アンタ、ノリノリやったよぉ?」

「本当!?」

「ホンマよぉ、
なぁ、ハル?」

「いや、オレ思い出してねぇ。」

「なんやのぉ?」

「にしても、よく思い出したな。
翔。」

「いや、写真みつけたから・・・。」

そう言って
翔が見せた写真は、
アルバムに入ってなくて
一枚だけだった。
卒アルにでも
挟んであったのだろうか?

ー中央に写っているのは、
もちろん雷樹。
 『4年後のぼくらへ』
(他にも何か書いてるが
反射で読めない。)と書かれた缶
 ・・・タイムカプセルを
頭の上に持って、
凄い笑顔で視線を向けている。
 その右隣では、
今より少し髪の長く
雷樹より大人びた印象を受ける奈々。
 はしゃぐ雷樹に静かに寄り添って、
澄ました表情で視線を向けている。
 左隣では、
雷樹との距離に恥ずかしいのか
オドオドしてる涼。
 右上には写真の枠ギリギリにオレ。
左下には背中をかがめて
顔だけでも入ろうとする翔
 穴を掘ったあとで撮った写真なのか、皆の顔や服は
ところどころ汚れていて・・・
 タイムカプセルを持つ雷樹の
軍手はまっくろだ。

「これが、僕・・・?」

「せやねん、
うわぁ、幼いなぁ!」

「翔、サルみてぇな
顔してやがる!」

「てめぇがいうな!」

「・・・明日でも、
ほりに行かんと。な?」

みんな、頷く。

「体育館裏の木って、
1本じゃなかったよな?
どうする?」

「片っ端から掘るなんて
・・・できないよね?」

翔と涼が不安になること言う。

ーすると、奈々が言った。

「それは大丈夫・・・
アタシが覚えとるから。」

「埋めたコト忘れてて・・・
場所は覚えてんのかよ。」

「陽輝うるさい!・・・
覚えてるねん!ハッキリ。」

「・・・?」

「あんときな、ちょっと。
雷樹と約束したねん。
アンタは
覚えとらんみたいやけど。」

オレにも関係ある約束なのだろうか?
奈々が、
笑いをこらえるようにしている。

その後、
明日の話になってしまって。
思い出話なんかできなかった。

 
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