ひまわりに
その頃の奈々

夜、11時。
今日は、いろいろ危なかった。
そして今、
アタシは今の現状の複雑さと。
危なっかしさに、頭かかえとるとこ。

雷樹が泣いた。
翔の胸ん中で...。
保健室から戻ってきた翔は、
胸のところにシワとシミがあった。
明らかに動揺しとった。
しかも
自分、責めるような顔やった。
......だって、
好きな女に泣かれたんやもんな。


「はぁ。」

ため息が漏れる。
どうしたらええのやろ?
雷樹と翔みとると
今にも崩れそう。
翔、いつか、絶対に、
歯止めきかんくなる。

「はぁ......」

あぁ、なんか希望みえんくなってくる。
まぁ、元からボロボロやったけど。

泣かれた時の、翔の気持ち。
痛いほど分かる。
全力で守ってはいけない、
もどかしさ。
アイツ、こうゆうの慣れてへんし。
涼の仕事、取ったらアカンて
分かっとるから。辛いんやろな。

ー聞いてみよ。

不安なアタシの横で、
やっと声が聞こえた。

『も、しもし?』

「あ、アタシや!
 もぉ、早くででやぁ。」

『なんで電話なんだよ。
 11時過ぎてるし、
 メールでいいだろ・・・?』

「それがなぁ、
 今・・・ふぁぁ。眠いねん。」

『・・・・・・で?』

「声で話さんと、寝てまぅから。
 ・・・ふぁ、ムニャムニャ・・・。」

『すでに寝そうに
なってんじゃねえよ。』

耳元で呆れるような
ため息が聞こえる。

『で、なんの用だよ?』

「アンタ、今日の保健室で
 何があったん?

『!?』

見られたかって、ビビっとるなぁ。
まぁ、こうゆうことは何度もあったし
翔もえぇかげんに慣れろ。
翔って、ビビり過ぎ。

「泣かれたん?」

また、はっ!?って聞こえる。
こっちは眠いんやから、
はょ本題にはいろうや。

『なんで、解った?』

「ちょっとなぁ・・・。」

『顔に出てた・・・?』

「まぁ、そんなところ。」

ホンマはシワとシミやけど。

『・・・嘘だろ。』

「・・・ん?」

『教えろって、
なんでわかった?』

「あ、明日な?」

『今教えろって。』

「今教えたら、
 アンタ保健室のこと。
 教えんで切るかも・・・。」

「はいはい、・・・わぁったよ。
 てめぇはこうゆうとこ
 ぬかりねぇよな?」

「まぁね?」

翔が、また呆れたように言う。

アタシはやっと
今日の保健室でのこと・・・
雷樹が涼のことで悩んでること
涼が雷樹にパンを与えたこと
雷樹が泣きながら喜んだことを
聞いた。
もちろん、
翔が雷樹に話したことは
聞けなかった。

「せやったかぁ。
 アンタも大変やなぁ?」

『だろ?』

「明日・・・ガンバにぇ・・・。」

『にぇ?』

「むにゅう・・・・・・。』

とうとう、翔の声が聞こえなくなった。


iPodが、
手からするりと抜けて行くのを感じた
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