ひまわりに
タイムカプセル
Episode12 『あの頃』
「みんな、はぁ......待ってよぉ......。」
息が切れる、
みんなはもぅ100mくらい先。
8月の猛暑日。
いつも道り、
朝の登校から下校まで
一緒に行動した私たちは
いつも通り、
放課後も一緒だった。
「ライ、はよぉしな!!」
奈々の声、
みんな足速過ぎなんだよ。
「おい、翔!
アイツのダッセー走り方、
カメラに収めとけよ。」
「おぅ。」
「ちょっと翔!ハコ開けたら
アカンやろ。約束は守らな!」
「.......わかってるっつの。」
「なに不満そぅな顔しとんねん。
勝手に開けたら、ライが怒るで?」
5人でお金を出し合って、
ビデオカメラを入手した。
ビデオカメラなんて、
お母さんが昔、運動会とかで
使ってたけど。
最近は携帯で
やってのけちゃうんだよな...。
だから、譲ってもらうって
手もあったんだけど。
自分たちの、ってゆうのが良かったし。
みんな、ノリノリだったから。
今日涼のお兄ちゃんに頼み込んで、
さっきお店で買ってきて貰った。
「あー、早く撮りてー。」
「翔 、開けんなよ。
雷樹が泣くぞ?」
「せやで?涼の言うとおりや。
アタシん家はいるまでは開けたら
アカン。」
「家の前まできてんのにな。」
やっと、みんなに追いつく。
「はぁ、ふぅ。はぁ......。」
あー、目眩が......
「てめー、おっせんだよ。」
「ハルは速過ぎるねん!」
「おい、またケンカかよ?」
「別に、そんなんやないわ。」
「そーそー、コイツが
勝手に騒いでるだけ。」
「ちゃうやろ!!」
遠くで、3人の声が聞こえる。
「雷樹、大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫だょ。
涼は優しいね。」
「......ばーか。」
最後の声はちっちゃかった。
涼は本当に優しい。可愛い。
かっこいい。
だから、昔からずぅっと大好き。
「ジャー、はいるぜー。」
「またお前は......。」
ハルはいつも、奈々の部屋には一番先に入る。
そして、
「ちょっと散らかってるけど、
気にすんな。」
「なんでアンタに言われな
アカンねん!」
恒例行事。
「さって、と。 撮るか?」
私が箱を開けて手渡すと
翔は一言いって、みんなを見渡した。
「撮る、いうても。
なに話せばええのん?」
「タイムカプセルにいれんだろ?」
「うん、私はね。
今から卒業までを収めたいの。」
だから今から撮るのは、
未来の私たちが見た時の
オープニングに当たる部分。
「こんにちはー、とか?」
遠慮がちに涼が言った。
「自分らに向けて言うのか?
なんか変な感じ。」
「そんなもんやろ。
今の近況も言うとく?」
「いーね!!
じゃぁ、未来はどうなってますか?て
私きく!!」
「よし、じゃーアドリブで。
適当にいくか。」
「そうだね。
下手に台本とか書かない方が
未来の僕らも嬉しいと思う。」
ワクワクしてきた。
「じゃぁ、翔!
カメラそこの棚に固定して、
まわしたら こっちきて。」
私とナナは、カメラの前に正座する。
涼と陽輝は後ろでアグラをかいて、
翔はカメラの準備。
「あー、噛んでまぅかもしれん。
どないしよ。」
「どうせ見んの、自分だろ?」
緊張する奈々に陽輝がつっこむ。
私もちょっと、緊張してる。
未来の自分へ向けてのメッセージ、
未来の自分が楽しめるものが良いな。
「よし、まわすぞ。」
奈々は座り直し、
翔はボタンを押す準備。
「いくぜ、3、2、」ポチ
最後の1は言わず、ボタンを押した。
最初は、こんにちは。だよね?
「せ、せーの。」
「え、合わせるん?」
奈々に遮られた。
「え?違うの?」
「え?」
「は?」
「なんでハルが入ってくんねん!」
「なぁ、今カメラ回ってるんだよね?」
「あっ!」
涼の言葉で気づかされる。
「忘れとったんかい!」
「てめーがことの発端だろぅが......。」
翔はもぅ、諦めモード。
「あ、あわせよう!しきり直し!!」
私の一言でシンとなる。
「せーの。」
「「「「「こんにちはー」」」」」
私たちたちの時間が、物語が。
未来へ贈られるんだ。
そう思うと、胸が高鳴った。