マリア ―暴走族の女神―
「てめえ‥!!」

何が起きたの‥?
すると、自分を拘束する男達の手が離れた。

「くそっ!!うっ‥!?が、はっ‥」

色々な音が聞こえて―
涙で濡れた目を擦り、視界を開けてみると――‥


女の人が悠然と立っていた。
周りには先程の男達が倒れている。


(嘘‥この人が‥?)


だけど、この人以外誰も居ない。
どれだけ見渡しても、だ。

女の人は一言も言葉を発しない。
ただ、黙って男達を見下ろしていた――寒気がするぐらい冷たい目で‥。

こっちに振り返るその人を見て驚いた。

(うわぁ‥)

とても綺麗な人だっから。
今まで起きた、悲しみや苦しみが一瞬で消えるぐらい‥とても綺麗な人。


「もう、大丈夫」


その人は自身が着ていたジャケットをかけてくれた。
ジャケットからは、少しだけ大人な香水の香りがした。

"もう大丈夫"


その言葉でハッとした。


(そうだ私‥)


周りには倒れこんだ男達を見て今までの事を思い出した。


「私‥私‥」


女の人はしゃがみ込むと、その綺麗な顔が目の前に。


「もう大丈夫だから」


あ、そうか‥もう大丈夫‥なんだ‥。
私‥未遂で済んだんだ。


安心したのか、涙が出て止まらなかった。


「う‥ふえ‥ありがとうございます‥」


よかった‥
本当によかった――‥
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