マリア ―暴走族の女神―
ぼーっと前を見つめて、目の前に停めてある黒塗りの車が目に入った。

人のいる気配はない。

セダン車なのに車高は低く、無駄な装飾ばかりでまるで品がない。

この手の車は嫌いだ。
大嫌いだ。

脳裏にちらつく過去の映像―。

ギリッと自然にタバコを加える歯に力が入って、フィルターが潰れた。

場所を変えよう―

ふと目に入った。
公園の入り口に一人の男が立っている。

その男は回りを見渡し、こちらに向かってくる。
最初は警戒したが、目の前の車の所有者なのだろう。
黒塗りの車から飲み物を取り出すと、また公園の入り口に立ちはじめる。

(不思議な行動―)

何だが少し気になる。
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