マリア ―暴走族の女神―
あからさまにチームの奴らは騒ぎやしないが、やはり驚きを隠せないようで。


…そりゃそうだ。
ヘルメットに隠された顔を、誰も見たことない。


俺自身、あの夜の暗闇の中でしっかりと見れたわけじゃあない。


(こんな顔をしてたんだ)


俺だって驚いている。


大きすぎず、綺麗な二重に形のよい黒い瞳。

小振りだけれど鼻筋はツンと伸びていて。

口元は恐らく、何も塗られてはないだろう淡いピンク色。

長い髪は黒く艶めていて。


…その場にいた男達が魅了されたと思う。

アホみたいに口を開きっぱなしのやつもいた。


「まぁ座れよ」


その声で我に帰り、大和さんはソファーへと女を促した。


「…何?」


マリアは警戒と不満を隠せない顔だった。


「何もしねえよ、奈々の恩人だ。おいっ」


近くにいたやつに"あれ持ってこい"と言うと、そいつは勢いよく返事をし飛び出して行った。
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