向かいの窓の小さな彼。
小学生になっても、ベランダの鈴はなり続けた。
「はーるー、算数教えてー」
「やーだ!自分でやりなよっ!」
「春の意地悪!もう糸電話出てやんないからな!」
「わーごめんー!それはやだー!」
小学校を卒業する時も
それは変わらなかった。
「峡~!行くよー!」
「お前、早ぇよ準備が!」
「入学式、遅刻とか絶対やだからねっ!!」
「その声のボリューム、糸電話の意味ないし!」
「ごちゃごちゃ言わない!早く!」
中学の入学式の日も、変わらなかった。
雨が降るたびに新しく、作り直す。
濡れないように、ずっと傘を立てていた事もあった。
そんな糸電話がなくなったのは、
ここから1年後。