ハロー、バイバイ!
その頃から、女の子の影はチラついていたものの、ヒカルはシッポを出さなかった。
あのときは髪型もひどかった。
髪を赤茶に染め、ワックスでツンツン逆立てていた。
それで通学していた。
学業の成績は悪くはなかったが、母は、ヒカルが不良になったと本気で心配したものだ。
今時の若者らしく、ひょろりとしているけれど、顔が小さく、背の高さ、スタイルの良さは誠に負けていない。
少し下ぶくれの顔に濃い眉と、
はっきりとした目鼻立ち。
長い睫毛が母性本能くすぐった。
「俺、この子、バイクで送っていくから。すぐ戻る」
背後から声を掛けられ、美紗は振り向き、投げやりに言った。
「はあい。遅いから気をつけてね!」
ヒカルは、美紗に女の子の名前を教えることもなく、目で彼女に立つように促した。
彼女の眉が一瞬、傷ついたように歪んだのを美紗は見逃さなかった。
すれているように見えて、意外にそうでもないのかもしれないと思った。
ヒカルと女の子が出て行った後
美紗はソファーに座り、ため息をついた。
…ヒカルは、もう経験済みなのかもしれないー
誰もがいつかそうなるとはいえ、複雑だった。