ハロー、バイバイ!
「うち、男ばっかりの職場だからね。
黒木さんみたいな人が職場の華になってくれると、皆のやる気が出るよ」
こういうタイプの男は案外多い。
もちろん、ある程度年配の人だ。
部長は『それ、いつの時代?』みたいな
セリフを吐いた後、美紗の肩を撫でるように叩き、朝礼のあと、社員たちの前で挨拶をするように命じたのだ。
始業後も、男たちは、なぜか美紗に
なかなか仕事を頼もうとしなかった。
なんとなく『既に部長がツバをつけた女』という雰囲気で皆、美紗を敬遠していた。
とりあえず、与えられたデスクに座ったものの、美紗はすっかり困り果ててしまった。
立ち上がり、仕方なく、近くにいた小肥りの40歳くらいの男に話し掛けた。
「あのう、私、何やればいいですか?」
普通に話し掛けたのに、その男はデスクに置いた図面に目を落としたまま、微動だにしなかった。
「あの、すみません!」
もう一度、声を掛けても、反応はない。
まるで美紗が透明人間みたいに。