ハロー、バイバイ!
旅行の時に美紗は気付いた。
誠は、保養所の家族客の中に幼い女の子を見つけると、眉根を寄せ、すぐに目を逸らすことに。
…まるで、無理にきららを拒否するかのように。
誠は、きららを少しでも忘れようと努力をしているように見えた。
そんな誠を見ると美紗も辛かった。
しかし、美紗には、どうすることも出来ない。
『子供がいる離婚って、つくづく罪作りなものなのよね…』
久しぶりに掛けてきた電話で、美紗の母は自分の過去を思い出すように言った。
母には、もう既に誠のことを話していたー週末妻をしていることは抜きにしてー
『いい男で逃したくないなら、
自分からプロポーズすれば?』
美紗の母は、自分の経験を生かしてアドバイスをくれた。
「それはちょっとね~」
美紗は首を横に振る。
プロポーズは絶対に誠の方からして欲しかった。
まだ交際して四ヶ月ほどしか経たない。
焦ることはないと思いつつも、29歳だ。
どうせなら、20代のうちに結婚したいと思う。
美紗は早生まれの三月が誕生日だから、また猶予はあるけれど、光陰矢の如しだ。
『婚約だけでもいいから、出来ないの?』
娘の花嫁姿が早く見たい美紗の母は、フライング気味にそんな事を言った。