ハロー、バイバイ!
恋しい夜
秋の虫が、うるさいくらいに鳴いていた。
夜になると、少し肌寒かった。
ヒカルはこの頃、家には寝に帰るだけのような生活をしていた。
食事も殆ど外で食べてくるから、平日、会社から帰った美紗は、自分一人分だけの夕飯を作り、食べていた。
今日は簡単にパスタを茹で、缶のミートソースを掛けた。
ついでにブロッコリーも茹でる。
ブロッコリーをつつきながら、
美紗は憂鬱な気持ちだった。
先週の土曜、いつものように誠の家に
泊まった。
その時、美紗の母が横浜に戻った折には、母との会食に誠も同席しないかと誘ってみると、明らかに彼は困惑していた。
答えに窮するように黙り込み、
「…まだいいよ」と呟くように言うと、視線をテレビに移した。
断られたのだ。
ショックだった。
美紗の中で誠は多分、承知してくれると思い込んでいた。
たかが、食事なのに…
悲しくて一瞬、泣きそうになってしまった。
このまま、ダラダラと家事とエッチ付きの交際を続け、ある時、ポイと捨てられたらどうしよう…。
誠は、美紗が来年三月に30歳になることをもちろん知っている。
「まだいいよ」とはどういうことなのか。男として責任があるはずなのに。
美紗はこの時、初めて誠に不信感を持った。