ハロー、バイバイ!
美紗は苛立った。
泣けばいいと思っているのか。
二人とも脛かじりの学生のくせに。
妊娠が本当なら、大事だ。
中学生じゃあるまいし、するならするで、予防くらいしっかりしろと怒鳴ってやりたかった。
しかし、追い詰められて肩を震わせ、泣く亜美の姿は不憫だった。
「どうして?ヒカルはあなたの彼氏でしょ。
まず、ヒカルに言わなきゃ」
美紗はなるべく優しい声で言う。
亜美は、涙で濡れた顔を上げて言った。
「…赤ちゃん出来たかもって言う前に、亜美、ヒカルに別れて欲しいって言われちゃったんだもん…」
(…あっ…いけない…)
うとうとしてしまった。
美紗がヘッドボードの目覚まし時計を見ると、もう午後11時だった。
カーテンを締め切った部屋の中は真っ暗で、DVDのデジタル文字の青い光が闇に浮かび上がる。
冷んやりとした空気が美紗の素肌の肩口を撫でる。
外はもっと寒いだろう。
暖かいベッドから起き出すのはとても億劫だった。
でも、グズグズして終電を逃したら、家に戻れなくなる。
美紗は不承不承、這いつくばるようにして、そこら辺に散らばった自分の衣類をかき集め、ベッドに腰掛け下着を身につけた。