ハロー、バイバイ!
気怠かった。
シャワーを浴びていない身体に、男の体臭が染み付いている気がする。
「美紗、泊まれよ。
外、寒いぞ。風邪引くぞ…」
ふいに誠の右手が、美紗の腕に触れる。
…寝ている誠を起こさないように、気を付けていたのに。
「ごめん。帰ってヒカルと話し合いたいの。
あの子、バイトばかりしてて、夜は11時過ぎないと帰ってこないから、平日はなかなか話せなくて。
混み入った話だから、メールも何だし、土曜の夜がいいの」
誠にも亜美の話はしていた。
「そうか…帰っちゃうんだ」
誠が目を伏せ、寂しそうな顔をするのを、美紗は見て見ぬ振りをした。
誠への不信感ーそれは美紗の中で日ごとに募り、今は失望感となっていた。
初めての夜の誠の言葉ー
将来を考えていると言ったあの言葉は、身体を自由にさせてくれる女に対しての社交辞令だったのかもしれない。
それを小娘みたいに鵜呑みにして、結婚するんだと思い込んでいた自分。
もう、若くないのにー
電車の吊り輪につかまりながら、暗いガラス窓に映った自分の姿を見て、美紗は泣きたくなった。
車で美紗を自宅まで送ってくれるというのを、「いらないから!」と邪険に断り、誠は黙り込んでしまった。