ハロー、バイバイ!
「俺は営業一課だよ。四月から
東京の本社からここに異動になったんだ。
三ツ木(みつぎ)と言います。」
三ツ木誠は人懐こい笑みを浮かべ、自分のポケットから取り出した写真入りIDカードを指し示して美紗に言った。
この会社は、美紗の家から通勤の便が良かった。
電車に揺られること15分。
4駅目で降りてから徒歩5分。
ドアトウードアで40分ほどの通勤時間だ。
工業団地の中にあり、広い敷地にある二階建ての社屋の一階は製造ライン。
二階は事務所、別棟の社屋(こちらの方が少し立派)に社長室、総務課、人事課、営業課が入っている。
美紗がいるのは、二階の事務所の設計二課だ。
工場の上にあるオフィスだから、オシャレでも、なんでもない。
いや、オフィスという言葉すら似合わない。
メインの生産ラインの大きな工場は岐阜にあった。
でも、こんな職場でも、素敵な男は探せばいる。
営業一課 三ツ木誠。34歳。
あれから、彼とは廊下ですれ違う度、笑顔で会話を交わすようになった。
美紗が派遣先の流量計製造メーカーで、主任の肩書きを持つ彼に
食事に誘われたのは、六月の梅雨入りしてすぐの事だった。