ハロー、バイバイ!
亜美が金など返すわけがない、と思った。
…ヒカルはアホだ。
こんなのを彼女にするくらいだから、異国のオーストラリアで浮かれて馬鹿な女にひっかかる可能性は高い。
今度、一言、注意しなければ…と思った。
ファッションビルのトイレで、妊娠検査薬を使うことにする。
そこのメイクルームは、ゆったりと広くて洒落ている。
人も少ない穴場で美紗のお気に入りだった。
「あっ、ATMみっけー!
お金下ろせるう!」
エレベーターの脇に据え付けられたATMを亜美は、嬉しそうに指差した。
「はいっ、お姉さん、これ!」
美紗の予想を裏切って、亜美はお金を返してくれた。
(なんか疲れた…
振り回されちゃう…)
誰もいないトイレのメイクルームで美紗は足を組み、亜美がトイレから出てくるのを待つ。
ふと、美紗は自分がコギャルにでもなったような気がした。
亜美は、多分、もとコギャルだろう。
しかも、かなりお馬鹿さんの。
もっとも今は、コギャルなんて言わないらしいけど。
(あんなのが看護学生だなんて、世も末よね…)
ミラーに写った自分の顔を見ながら、美紗は思った。