ハロー、バイバイ!


やがて、きららの名前が呼ばれた。

ステージの袖から現れた幼女は、裾の広がった淡いオレンジ色のドレスを身につけ、ピアノの前に立つと観客達に向かって、ぺこりと頭を下げた。


おでこを出し、ポニーテールに結った髪に大きな白いリボンをつけていた。

遠目からでも、きららが器量良しでしっかりとした娘であると分かる。


誠は会場に入った時から、ほとんど喋らなかった。

美紗の言うことに相槌のような短い返事だけした。
不機嫌というのではなかった。


美紗を見る眼差しはいつもと変わらず、席に座る時も、「美紗、見える?」と気遣ってくれた。



きららは、少しのもたつきはあったものの、その曲を愛らしく弾きこなして見せた。


誠は、足を組み、椅子のアームに片肘をついて、ただじっとピアノを弾く愛娘の姿を見つめていた。


演奏の終わったきららは再度、ピアノの前に歩み出て、頭を下げる。

極度の緊張から解き放されて、安心したような柔らかい笑みを浮かべていた。
薔薇色の頬っぺたが輝いていた。


観客の拍手が鳴り響く中、最前列の真ん中で、一際大きな拍手を送る男がいた。




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